2stroke with powerband -It's always smokin' on the road.


Motorcycle's Geometry
☆バイクのジオメトリについて
バイクは静止状態では直立もできない乗り物である。
コーナリングにおいても、四輪車のように曲がりたい方向にハンドルを切って曲がる乗り物ではない。
バイクのトータル性能が上がった昨今のバイクでは乗っているだけでそこそこ走れるようにはなってきているが、バイクの特性を引き出すライディングを考える上でも基本的なバイクのジオメトリについて知っておくことは非常に有用だ。
・・・すでにご存知の方にはタイクツなページでしょう。どうぞ読み飛ばしてください。
☆一般的にバイクはエンジンを搭載するフレームがあり、フレームから後方に上下方向に弧を描くように動くスイングアームが連結されその末端に後輪が存在する。フレームの前方にはステアリング軸を上下に挟み左右方向への操舵をつかさどるステアリングブラケットがあり、ステアリングブラケットは前輪を支持し緩衝装置を備えたフロントフォークが貫通した状態で存在する。またフロントフォークはオフセットが与えられステアリング軸より少し前方に位置している。
☆フロント周りの構成
☆前輪は後輪に引っ張られている。
後輪は前輪を引っ張っているのである。
パッと見には、駆動輪である後輪が前輪を押しているかのように見える。
だがしかし、実際においては後輪こそが前輪を引っ張っているのである。
バイクの最末端にある後輪が最先端にある前輪を引っ張るなどとは、バイクを眺めているだけでは理解しがたい。
右の図を見てみよう。
バイクのフロント回りの関係を見て取れる。
ステアリングヘッドにはキャスター角が付いている関係でアクスルシャフト方向へ伸びているステアリング軸の延長線は前輪の接地点よりも前に位置していることが分かると思う。ちなみにこのステアリング軸の延長線上の点と接地点の距離をトレール長という。トレール○○mmというやつ。んで、後輪が回転しスイングアームを前に押す。スイングアームはフレームを前に押す。フレームは先端に取り付けられているステアリング装置を前に押し出す。ステアリング装置はその末端に取り付けられている前輪を押し出すように見えるのだが、前輪の接地点はステアリング装置よりも後方に位置しているため、実際は引っ張られる形となるのだ。
caster angle & trail length
キャスター角:caster angle
castは投げるという意味があるから、「投げ出し角度」といったものか?確かに足を前に投げ出しているように見える。
電車の中で足を投げ出して座っているヒトを思えばよろしい。確かに奴らの足にはキャスター角がついている。
自転車が発明されたときにはキャスター角は付けられていなかったらしい。なぜ、キャスター角が付けられるようになったのか?単純に考えて、走破性の向上にあったのだと思う。フォークが直立した状態では路面の凹凸に前輪が引っかかって、つんのめってしまうだろう。あまりに大きなギャップだったりするとフォークを折り曲げてしまったことがあったのかもしれない。そこでフォークをナナメにすることで衝撃を受けても前転せずに乗り越えられるようしたのだろう。また、このキャスター角が付けられることによって得られるものにトレールの長大化がある。トレールを大きく取ることによって復元性が高まり直進時の安定性をも手に入れることが出来たのだ。
トレール:trail length
trailは引きずるといった意味。確かに接地点を前方から引きずっている。
このトレールが大きいと(長いと)操舵したときに接地点の移動量が大きく復元性が増す。前輪が左右に振られたときでもズレた接地点を元に戻そうとするチカラが大きく働くのだ。外径の大きなタイヤはトレールが大きいし、キャスター角を寝かせればトレールは大きくなる。
アクセルを閉じるとフォークは縮みキャスター角が立ちトレールは減少する。アクセルを開けるとフォークが伸びてキャスター角が寝てトレールは大きくなる。この作用はライディングに大きな意味を持っている。トレールの減少した状態は復元力が小さくなりステアリングが切れやすくなり旋回のきっかけにつながる。また、加速状態ではトレールが大きくなり強い直進安定性を発揮してくれるのである。
じゃあ、ブレーキングでフォークが縮み、トレールが減少している状態では不安定なのかというとそうでもない。前輪の接地面に大きな面圧がかかって路面に食い込むので、接地点がずれにくく強い直進安定性を生んでいるのだ。
トレールは外径の同じタイヤで同じキャスター角であれば決まった大きさになるのかといえばそういうわけではない。
トレールはタイヤ外径、キャスター角、フォークオフセットの3つの要因で決められるのだ
オフセット:offset
offsetは本来、相殺するという意味である。
差引勘定をするという意味から転じ、ある点の基準点からの距離を表した値をオフセットと呼んでいる。
簡単に言えば、ある点が基準点からどれだけ移動しているかという意味だ。慣用的にズラすことをオフセットするなどともいう。ココで取り上げているフォークオフセットは、ステアリング軸延長線上からアクスル軸中心間の距離のことを指している。世の中にはリーディングアクスルトレーリングアクスルスランテッドアングルのバイクもあるが、ココではフォークの中心とアクスル軸の中心が一致していると考えてバイクを上から見た場合、下の図のようになる。
fork offsetフォークのオフセット量とは、乱暴に言ってしまえば、ステアリング軸とフォークの刺さっている位置の距離のことになる。なんでこんなことをしているのかといえばフォークオフセットをつけることでトレール量を調節しているのだ。キャスター角をつけることが考えられたとき、そのことによって巨大なトレールが与えられ強い復元力によりステアリングがモノスゴク重くなってしまったはずだ。そこで頭のいいヒトがフォークをステアリング軸よりも前方にくっつけることでトレール量を相殺しステアリングを軽くすることを考え付いたと思われる。
ステアリング軸の位置がそのままでアクスル軸が前進するとトレールが減るステアリング軸より前方にフォークをつけるとトレールが減るのか?簡単である。ステアリング軸の位置がそのままでフォークが前に行けば、その末端にあるアクスル軸も前進する。アクスル軸の位置が前進すれば接地点も前進するのだ。トレールはステアリング軸の延長線上の点と接地点の距離なのだからこの距離が減るわけである。こうすることで復元力が減りステアリングを軽くすることが出来るというわけだ。一般にアメリカンバイクのように大径タイヤでキャスター角の寝たバイクでは、大きくなりすぎるトレールを減らすためにオフセットは多めにとられる。また、レーサーなどスポーツバイクでは少なめのオフセットとなっている。
操舵角と実舵角
操舵角はハンドルを切ることによって付くステアリング軸の角度のこと。実舵角は実際に前輪に付く角度のことだ。
ステアリング軸にキャスターが付けられていない(キャスター角0度)場合、操舵角と実舵角は一致する。
キャスター角が90度(水平)についていた場合、ハンドルを切ってもタイヤに舵角は付かず傾くだけとなる。
実際のバイクではキャスター角が25度前後くらいとなっている。このくらいのキャスター角だと、バンク角が0度のときは操舵角よりも実舵角は小さくなる。そして前輪には傾き(キャンバー角)がつくことになる。また、バイクを傾けていくだけでハンドルを切り増ししなくても実舵角は大きくなっていきバンク角が深くなると操舵角よりも実舵角のほうが大きくなる。実舵角の増大効果を体感するのにはUターンをしてみるとわかりやすい。バイクを寝かせた状態でUターンをすると直立した状態で回るよりも小回りが出来るはずだ。また、バイク(自転車でもいい)を直立させハンドルを切った状態とハンドルを切った状態でバイクを傾けてみると前輪の向きが内側に移動していくことが見て取れるはずだ。これはフロントタイヤが傾くだけでスリップアングルを稼いでいるともいえる。
走行バランス
バイクにはバランスをとってまっすぐ走らせようとする機能がある。直進時にも前輪は小さく小刻みに左右に振れている。ステアリングダンパーをつけて減衰力を強くしてみるとわかりやすいが、ハンドルが左右に振れにくい状態で低速で走らせるとかえってバイクがゆらゆら振られてしまうのだ。これはバランスと取ろうとしてハンドルが切れるのをステアリングダンパーが制限してしまうために起こる現象だ。仮にステアリングが全く切れない構造にしてみたら直進することすら出来ない。かつて知人のバイクで経験したことがある。彼のオフロードバイクはジャンプなどでステアリングヘッドのベアリングが壊れていた。ベアリングレースに付いたヘコミにボールがはまってしまいハンドルが切れなくなってしまうものだった。ちょうどニュートラルの位置にあって、走行中にボールはまってしまうとバイクが傾きだし全く復元できなくなってしまうのだ。傾いたら倒れるまで傾き続けようとする。恐怖である。そのときは強引にハンドルを切ることで転倒は回避したがバイクのバランスがステアすることによって得られていること身をもって知った一件だった。前述したようにトレールが与えられていることにより接地点の移動を復元しようとする力が働き直進性を保とうとするのだが、ステアリングが切れなければ復元力もヘッタクレもあったもんじゃない。
走行バランスを保つ作用にはジャイロ効果によるものもある。ジャイロ効果は回転体の回転軸の向きを保とうとする性質と軸の向きを変えようとするとそれに反発する性質がある。ステアリングが切れてバランスを取ろうとするのは後者の性質だ。ジャイロ・プレセッション(歳差運動)呼ばれるもので、回転軸が傾くとそれに反発しもとの姿勢に戻ろうとするため、軸が旋回しようとする性質だ。バイクに当てはめると、前輪が傾くと傾いた方向に前輪が切れて傾きを引き起こそうとするといったものだ。トレールによる直進安定性を保つ作用とジャイロ・プレセッションによる作用があって走行バランスが保たれているのだ。
ステアリングの動き
バイクは車体を傾けると自然に傾けた方にステアリングが切れる。
前項でジャイロ・プレセッションによる作用を説明したが、これはあくまで走行中の話になる。なにせ回転体の話だから。
別に走行中でなくとも車体を傾ければステアリングは切れる。フォークオフセットが与えられているからステアリング系の重心はステアリング軸よりも前方に存在している。バイクが傾けばステアリング系の重心も高いところから低いところへと移動しようとする。すなわち、ステアリング軸を中心に傾いた方向へとステアリングが切れるわけだ。わかりにくければ実験する方法がある。コンパスを90度に開いて針の部分を板に刺し、エンピツの方に消しゴムなどの重いものをくくりつける。そして水平の状態から左右どちらかに傾けてみる。そうすると針の部分を支点に傾いた方向へ重量物をくくりつけた方の足が旋回してくるはずだ。モノは違えど動く理屈は一緒だ。バイクで試すには静止状態でステアリングをフリーにして車体を傾けていくとステアリングが切れていくことがわかる。ただし、グリップのよいタイヤだと路面との摩擦で動きがわかりずらい。マンホールのフタの上など摩擦の高くない場所で試してみると良い。この重量効果によるステアリングの反応はバイクによって違いが大きい。メーターやライトがフォークにマウントされているものは※慣性モーメントが大きいので動き出し初期の反応が鈍い、しかし動き出すと止めにくくなるからステアリングが収束するのも鈍く、グラッという感じで切れ込むような印象を受けがちだ。メーター類がカウル(フレーム)にマウントされているバイクに乗っていて、ノンカウルのバイクにたまに乗るとこういう印象を良く受ける。カウルを壊して(趣味で外している?)フォークにメーター類をつけてノンカウルにしているバイクをよく見るが、場合によっては大きくなった慣性モーメントのせいで切れ込みを感じたり、グラついたりしやすいと思う。このような場合、ハンドルを後ろに引いたり、絞ったりすることである程度フィーリングを変えることも出来る。
※慣性モーメント
回転運動の変化のしにくさを あらわす。その大きさは、運動体の重さとその中心軸からの距離の二乗に比例する。
要するに同じ重さのものでも中心軸から距離が離れるほど動かしにくく、止めにくいという事だ。中心軸からの距離が同じであれば重いものほど動かしにくく、止めにくくなる。一般的な例ではフィギュアスケートの高速スピンだ。横に伸ばしていたウデを身体(中心軸)にひきつけると慣性モーメントが小さくなり回転が速くなる。地球的規模でいえば、スマトラ島沖の地震で重いものが地球の中心に移動したとかで慣性モーメントが小さくなり自転速度がわずかながら速まったらしい。
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